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子どもの集中力の正体とは?家庭でできるサポート方法と集中力の高め方を解説!

子どもの集中力の正体とは?家庭でできるサポート方法と集中力の高め方を解説!

2024年4月15日 公開

宿題をやっていたかと思えば落書きをしていたり、お手伝いをしていたのにいつの間にかテレビに夢中になっていたり・・・「うちの子、集中力がなくて心配」という声をよく耳にします。
私が子育て支援機関で勤務していた際には、集中力にまつわる困りごとは必ず相談されることの1つでした。
通算100件以上の子育ての悩み事の中でも特に多かった子どもの集中力について解説し、家庭や習い事を通した集中力の育み方もご紹介します!

そもそも「集中力」「集中している状態」とは?

そもそも「集中力」「集中している状態」とは?
なんとなく「椅子に座って一生懸命1つのことに取り組んでいる状態」が長く続くと、集中していると感じますよね。
実は集中力や集中している状態にはいくつかの要素が含まれています。

集中力とは「注意力」

心理学や応用行動学では、集中力がある人とは、状況に合った注意力があり、それが持続している人を指します。
一般的な集中力に関連する「注意」には、以下の3つの要素があります。

選択的注意

複数の情報から、注意を向ける対象を選ぶことを指します。
例えば、学校の授業の目的に沿って活動したり、大勢の人がいる中で自分の名前を聞き取ったりする際に必要になる注意力です。

分散的注意

複数の対象に同時に注意を向けることを指します。
スポーツや車の運転の時、英語のリスニングをしながらメモを取る際にはこの注意力が必要になります。

持続的注意

特定の対象に向けた注意を持続させることを指します。
学校の先生の話を終わりまで聞いたり、一定時間ドリルに取り組んだりする際に必要になる注意力です。
子どもの集中力がない、と感じる際には、主に「選択的注意」と「持続的注意」の2つの要素が絡んでいる事が多いです。

集中している状態とは「フロー状態」

ときどき、子どもが無我夢中で時間を忘れて、遊びに集中し続けている時がありますよね。
「この集中力が勉強にも活かされればいいのに」と考える保護者の方も多いのではないでしょうか。
心理学者のM.チクセントミハイ博士は、この無我夢中になっている状態を「フロー状態」と名づけました。

フロー状態に入っている状態を表す8つの特徴

M.チクセントミハイ博士の著書「参考:フロー体験とグッドビジネス」では、フロー状態に入っている特徴を以下の8つで述べています。
  • 目標が明確
  • 活動の成功・失敗について即時のフィードバックが受けられる
  • 挑戦と能力の釣り合いが取れている
  • 注意が散漫にならず集中できている
  • 状況や活動を自分でコントロールできている
  • 時間と我を忘れて没頭する
  • 自分から活動に取り組めている
  • 活動が苦にならない
遊びの時のような「フロー状態」は、8つの要素の中からいくつかを組み合わせると再現できそうですね。

「集中力が続かない」。
あなたの子どもはどれから見直す?

子どもの集中力がないという悩みを解決していくには、まずは子供の集中力の持続時間の目安を知ることとが大切です。
その上で、「集中力がない」の言葉に潜む課題を細分化してみましょう。

人の集中力は、想像以上に途切れやすい

集中力は15分単位で一度途切れる、という事は教育業界では長い間一般的に言われていました。
東京大学の池谷裕二教授と株式会社ベネッセコーポレーションは、「60分×1回」、「60分×1回」、「休憩を挟んだ15分×3回」の学習方法で英単語の定着を測る実験を行いました。
そして、「休憩を挟んだ15分×3回」の学習が最も集中力の維持と学習内容の定着に効果が高いというデータが出ました。
長時間集中力を持続するのは難しいことがわかりますね。
「集中力が続かない」。あなたの子どもはどれから見直す?

子どもの集中力の持続時間の目安

子どもの集中力の持続時間は、一般的には「年齢×1分」または「年齢+1分」と言われています。
例えば6歳の子どもであれば、6、7分継続して1つの物事に取り組む事ができると考えられます。
ここからは、子どもの集中に関する困りごとタイプに合わせた対策をご紹介していきます。

1つの物事を最後までやり遂げるのが難しい時

宿題中にいつの間にかゲームをしている、片付け中におもちゃで遊び始めてしまう、などは、このタイプと言えるでしょう。
物事の完了・遂行が難しい際には大きく分けて2つの場合があり、対策も異なります。

取り組んでいる事が難しい、つまらない場合

物事を完了・遂行できない場合には、やっていることの難易度や方法が子供に合っていない事が考えられます。
この場合には例えば、
  • 宿題に取り組んでいたのに突然関係のない話を始める
  • 活動に戻るよう促すとぐずったり怒ったりする
など、活動そのものを回避する行動を見せます。

子どもにも理解できて達成できそうな目標を立てる

上記のような様子がみられた場合には、まずは明確かつ子どもにとって簡単に達成できる目標を立てましょう。
子どもにも理解できて達成できそうな目標の例:
  • 練習が1列終わったらシールをあげるから、5個貯まったらジュース休憩にしよう
  • 今日はわからないなと思った時に、質問を1つできたらバッチリだよ
どのような状況で何ができたら良いのか、具体的に示してあげましょう。

活動の取り組み方を変える

目標を簡単にしても活動を完了できない場合には、活動のやり方を見直してみましょう。
活動の取り組み方を変える例:
  • 漢字練習の時:1分間でどのくらいの漢字を書けるか競争しよう
  • 漢字を覚えたい時:習った漢字を使って漫画のセリフを書いてみよう
このように、子どもが好きなゲームや遊びの要素を取り入れてみると良いでしょう。

気が散ってしまう場合

集中力が切れるということは、注意の選択が難しい環境にいるとも言えます。
この場合には例えば、
  • 本人も気がつかないうちに別の活動に移っている
  • 声をかけると活動には戻れるが、また同じ何かに気を取られている
など、本人の活動への意欲とは関係なく、本来取り組んでいた事から離れてしまう様子が見られます。
正しい物事に注意を向けられるよう、周りの環境を調節することが必要です。
注意の選択を妨げる原因と対策の例には、以下のようなものが代表的です。
  • 音が気になる場合:テレビを消す、ノイズキャンセリングイヤホンやイヤーマフを使用する、ホワイトノイズやピンクノイズを流す
  • 活動に関係のない物が気になる場合:パーテーションなどの仕切りを置く、活動に必要のないものは隠す・片付ける、活動する順にものを並べておく、場所を変える
他にも匂いや温度、感触(ペンの書き心地等)の感覚に関するあらゆる事柄が集中を妨げる原因になり得ます。

子どもが一定時間じっとしていられない・じっくり取り組めない場合

なんだかそわそわしている、気づくと立ち上がって歩き回ってしまう、そんな様子が気になる子どもには以下の2つを試してみましょう。

「集中している」状態を言語化・視覚化する

集中力がない子どもの中には、「ちゃんとやって」「集中して」のような形容的な表現と実際の行動が頭の中で一致していない子もいます。
例えば
  • 「ちゃんとして」というと「ちゃんとやってるよ!」と言い返してくる
  • 先生から注意されるまで、自分が集中していないことに気がつかない
など、自分の状態に無自覚な様子が当てはまります。
「集中している」状態を言語化する際には、上記に挙げた3つの注意力を5W1H(いつ、どこで、なぜ、誰が、何をする、どのくらい)の要素を使いながら具体的に表現してみましょう。
  • 選択的注意:宿題の時間だから、机に座って漢字ドリルをやろう
  • 分散的注意:危ないから、走る前にこの線のところで、右と左を2回見て誰もいないことを確認しようね
  • 持続的注意:机に5分間座って、漢字ドリルを1ページ進めようね
また、集中している状態を視覚化することも有効です。
以下のようなイラストで視覚的なチェックリストを作ることで、集中している状態を子ども自らが作る事ができるようになります。

心・体の状態を確認し、調節する

大人も私生活のトラブルが仕事での集中力に影響する事がありますよね。
子どもも、子どもなりの世界で様々なことを経験しています。
例えばイライラしている時に通常時と同じ条件で集中することは難しいと考えられますし、まだまだ発達途中のため体の感覚をうまくコントロールできない場合もあります。
心の状態と調節の例:
  • 友達と喧嘩をして落ち込んでいる時:好きなアニメをおやつを食べながら見て気分転換をしてから宿題に取り組む
  • お出かけで気分が上がりすぎてしまった時:本を読む、絵を描くなど静かに座ってできる活動を挟んでから目的の活動に取り組む
体の状態と調節の例:
  • 座っているとだらりと姿勢が崩れていってしまう:クッションやバランスディスクなどで座位の調節を行う
  • いつの間にか歩き回って落ち着かない:スタンディングデスクなどで立って宿題をする
  • なんだかソワソワしている:スクイーズやウェイトブランケットなどの感覚刺激グッズを取り入れてみる
集中力が続かない、集中できない時の周りの環境の条件や、子どもの状態と、集中できている時の状態を比較して原因を探っていきましょう。

集中力を高める遊び・習い事

集中力を高める遊び・習い事
記事のはじめにフロー状態について解説しましたが、まさにフロー状態に入れるほど集中する経験は、他の活動の集中力も高める事が期待できます。

「注意力」「集中の持続力」、高める鍵は成功体験

フロー状態の経験が注意力や集中の持続力を高めてくれる理由として、集中して1つの物事に取り組んだ成功体験が挙げられます。
1つの物事に取り組んだ結果、楽しかった、思ったよりも簡単にできた、といった体験は物事に取り組む意欲を高めてくれます。
子どもの興味関心に沿った活動の中で、ポジティブな声がけを行うように気を配りましょう。

集中力を高める遊び

集中力を高める遊びでは、1つの遊びで複数の注意力を同時に鍛えられます。

体を使った遊び

体を使った遊びは、親子で一緒に楽しめるものが多く、集中力を楽しく高めるにはぴったりです。
特に自分に合った情報を選択する「選択的注意力」と周りの状況と自分の状況に同時に気を払う「分散的注意力」が育まれるでしょう。
アスレチックやロッククライミングなど自分のペースでできる遊びと、バスケットボールや卓球などチームで協力する遊びがあります。
子どもが楽しめるジャンルを選びましょう。

室内の遊び

遊びの中でも、ボードゲームやカルタ、間違い探しなどは「選択的注意力」と「継続的注意力」を伸ばすのに適しています。
ボードゲームは、人生ゲームのように運要素が強いものよりオセロやブロックス、将棋などのような集中して頑張った結果勝てるようなものが向いています。
カルタやドブルなどの単発的な間違い探しゲームは主に選択的注意力を伸ばすのに向いています。
「ミッケ!」や「ウォーリーを探せ」などじっくり取り組む間違い探しは、加えて継続的注意力も伸ばすことが期待できます。

集中力を高める習い事

習い事は自分だけの特技や興味関心を伸ばす事ができ、集中力を高める成功体験には最適なチャンスとなります。
実際に試してみて、子どもの意欲に繋がる競技や先生、教室を選びましょう。

体を使った習い事

体を使った習い事は、個人競技の習い事と団体競技の習い事に分けられます。
個人競技の習い事で集中力を高めるものは例えばダンスや体操、水泳など体の感覚に集中する競技が挙げられます。
団体競技ではサッカーやバスケなど、周りの様子にも集中する必要のある競技が挙げられます。

文化系の習い事

集中力を高める文化系の習い事は、絵画教室や音楽教室、プログラミング教室が挙げられます。
いずれも自分のペースで進められる事が多く、好きなことの中に達成可能な挑戦があり、子どもの興味関心に沿っていれば「継続的注意力」の育成が期待できます。

まとめ

「集中力」や「集中している状態」には様々な要素が隠れています。
「集中していないな」と感じたら、行っている活動の難易度や楽しさを子どもに合わせて、集中しやすい環境を整えてあげましょう。
加えて、子どもが夢中になれる活動を通して集中力を養っていくことが大切です。
子どもも保護者も楽しく、夢中になって物事に取り組む経験を共有していきましょう!