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「不妊症チェック」夫婦の10人に1組が不妊ってホント?

「不妊症チェック」夫婦の10人に1組が不妊ってホント?

2017年1月13日 公開

「不妊症」ってなんだろう?「不妊症検査」って、なにするの?治療を始めると、費用はどれくらいかかるのかしら? さまざまな疑問について、調べてみました。

不妊症とは?

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「不妊症」って、なんだろう? 妊娠しづらいカップル(夫婦)のこと? 
言葉は聞いたことがあるけど、具体的にはよく分からない。そんな、あなたへ。
一緒に少し、考えてみたいと思います。


まず、日本産婦人科学会による「不妊症」の定義では
生殖年齢の男女が妊娠を希望し,ある一定期間,避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という
不妊の定義の変更について
と、されています。

その一定期間については、海外の様々な機関が「1年」と定めているのに対し最近まで「2年」としてきた日本ですが、平成27年8月に「1年というのが一般的」と変更をしました。
欧米諸外国に比べて日本人の性に対する意識が消極的であることなど問題は多いのですが、
わが国において、女性の晩婚化やキャリア形成指向、その他の理由により女性の妊娠する年齢が上昇する中、不妊(症)の定義の変更により、女性がより早期に適切な不妊治療を受けることにつながると期待
不妊の定義の変更について
して、短縮したようです。

これにより現在の日本では、「避妊せず1年を経過して性交をし、妊娠成立をみない場合」を【不妊症】という解釈になりました。

不妊症は他人事ではない!

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とはいえ、「自分は大丈夫」と思っている人は多いはず。

例えば・・・、
「私はまだ若い」から、大丈夫
「生理周期がキッチリしている」から、大丈夫
「生理痛なんて経験したことがない」から、大丈夫
「基礎体温をつけてみたら、しっかり2相性になっている」から、大丈夫
「健康診断の婦人科検診で、いつも異常がない」から、大丈夫

または、もっと具体的に・・・
「若いころに中絶したことがある」から、自分は妊娠しやすい
「一人、自然妊娠で子どもがいる」から、思ったときにすぐ妊娠できる

そんな風に思っていませんか?

でもそれは、本当に今後もすぐに妊娠できるサインなのでしょうか。


実際に、不妊治療のクリニックへ足を運ぶ人たちの中には、健康な20代の方もいらっしゃいます。
「2人目不妊」なんて、聞きなれない言葉で通う人たちも、少なくはないのです。

あなたは本当に大丈夫? ここで少し、ご自身の体について考えてみましょう。

もしかして貴方も不妊症かも…

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前述とは逆に、不妊症を疑っている人もいるかもしれませんね。

その理由もさまざまです。
それぞれの理由に分けて、考えてみましょう。

「もう若くないし…」

若さに関しては、NHK「クローズアップ現代」で取り上げられ有名となった「卵子のエイジング」。
それまで聞いたことのない「卵子の老化」が取り上げられ、当時、多くの女性たちは衝撃を受けました。

女性は有限な卵子をもって生まれてきます。
その数は胎児の頃が最も多く、だんだん減少してゼロになり、閉経してしまいます。
つまり、妊娠できる期間には限りがあり、長さは人それぞれですが必ず終わりが来るのです。

そして、生まれ持ってきた全ての卵子が妊娠の能力をもつ卵子ではありません。
年を重ねるほど、そうした栄養のある卵子に出会う確率は減っていくため、妊娠しづらくなるのだと言います。

妊娠には適齢期があることが、ここで大きく知られることになりました。

「生理不順」や「基礎体温がガタガタ」

初潮の頃から生理不順で、成人してからも続いているという人もいれば、過度のダイエットやストレスで生理不順を引き起こしてしまった人もいるかと思います。

どちらも、妊娠するためのホルモンバランスを崩してしまっている疑いがあります。
排卵をしていないかも知れません。黄体機能不全と診断されてしまう場合もあります。

漢方薬で体質改善をする方法もありますが、まずは日頃の生活を見直し、心当たりのあるものを1つ1つ改善していきましょう。
体質改善には時間が掛かり歯痒いのですが、将来のことを考えて早めの意識改革が大切です。

「生理痛がひどい」

生理痛の原因の中には、重大な病気が潜んでいる場合があります。

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など…。
これらを伴うものは器質性月経困難症といい、妊娠のジャマをしてしまうものもあるようです。

鎮痛剤を服用しても効果がないなど気になる方は、今すぐに妊娠を考えていなくても、早めに婦人科を受診することをお勧めします。

夫が心配

また、夫が「糖尿病である」「精神病薬を服用している」「抗がん剤治療を受けたことがある」などの方も、妊娠を考える時には専門のクリニックを受診することが必要かもしれません。

ただし、男性の方にとって専門機関への受診は、抵抗があることが多いようです。
そういった場合にはまず、近くの泌尿器科への受診でも良いかもしれません。
泌尿器科でも、簡単な精液検査をしてくれるところはあります。電話をして確認してみてください。

また最近は、「精子を持っているかどうか」を調べるため、簡易的なキッドを郵送する方法もあるようです。精子の寿命が持たないので精子数のカウントのみになってしまい、奇形率などの詳細までは調べられないようですが。


「不妊症」は、女性だけのものではありません。
不妊症の原因は、男女比がほぼ半分だと言われています。


最近は不妊治療クリニックの数が増え、数年前より随分敷居が低くなったと思われます。
気になるときは、まず相談に行くというのも良いかもしれません。

「冷え性=不妊症」ってホント?

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妊活を考えるとき、よく「冷え」を指摘されます。
「冷え性」という言葉も、最近になって取り上げられる事が増え、一般的な言葉になりました。
手足の冷えをうったえる人は冬だけではなく一年中になり、自覚症状のある人が増えてきたと言えます。


それでは、「冷え性だと妊娠しづらくなる…」と言われるのは、どういうメカニズムなのでしょうか。

体が冷えると、血行が悪くなります。
栄養はもちろんですが、ホルモンも血の流れにのって体中へ運ばれます。
ホルモンは、しっかり受容体に届くことで効果をあらわします。

つまり、「冷え」が続き血液循環が滞るとホルモンが受容体に行き渡らず作用しないため、妊娠しづらくなるのではないかと考えられます。

やはり「冷え性」は大敵ですね。
食生活において、体を冷やす食べ物を避けたり温める素材を取り入れたり、服装においても手首や足首を温めるなど冷やさない工夫を考えましょう。

「お酒・タバコ」と不妊症は関係があるの?

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「タバコ」に関しては、「冷え性」と同じことが言えます。

タバコは血流を阻害する要素を持っています。
タバコに含まれるニコチンが自律神経を刺激し、血管が縮んでしまうのです。
血管を縮めて血流を悪くすると、前述のとおりホルモンの循環が悪くなるため妊娠しづらくなると考えられます。

また、妊娠してからも喫煙はお勧めできません。
同じく血管の収縮に伴い、流産や早産を引き起こすからです。
厚生労働省の調べによると、
喫煙している妊婦から生まれた赤ちゃんは喫煙していない妊婦から生まれた赤ちゃんに比べて低出生体重児となる頻度が約2倍高くなっています。さらに、喫煙している妊婦は喫煙していない妊婦に比べ、早産、自然流産、周産期死亡(妊娠28週以降の死産と、生後1週間以内の早期新生児死亡)の危険性が高くなっています
厚生労働省「喫煙の健康影響について」
との報告もあります。

タバコは妊活時も妊娠中も、体に良いものではありません。
妊娠し健康な赤ちゃんをと考えるなら、つらい禁煙も乗り切れるのではないでしょうか。


「お酒」に関しては、「タバコ」ほど明確な指標は出されていないようです。
ストレス解消程度の飲酒なら問題ないかもしれません。

ストレスはホルモンバランスを崩し、生理不順などを起こしかねません。仕事や妊活に対する軽度のストレス解消として用いる程度なら、良いのではないでしょうか。

ただ、過度の飲酒はお勧めできません。

妊娠中や授乳中のお酒は控えるべきというのは、周知の事実です。
妊娠中は胎児に悪影響を、授乳中は母乳に入り乳児の発達を阻害するからです。
妊活中も、過度な飲酒によって妊娠しづらくなるという海外のデータが存在します。

中年男性に比べて、女性や高齢者は血中アルコール濃度が高くなりやすいようです。日頃から男性より少なめにすることも必要です。

「不妊症の診断」は何科に行けば良いの?

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少し前までは、「不妊治療」は「産婦人科」というのが一般的でした。
もちろん現在も、多くの方が「まずは産婦人科」の門を叩きます。何しろ、赤ちゃんを産む場所ですから間違いがない。

しかし昨今、「不妊症」を扱う専門のクリニックが飛躍的に増えました。
今や日本は、世界で最も不妊症の専門クリニックが多い国の1つです。検索をすれば最寄りのクリニックが1つは見つかるかもしれません。

専門のクリニックの方がお値段的には若干割高になるかと思われますが、「不妊症」だけを追求する分、より詳しく調べることが可能です。
また、専門クリニックが産婦人科と分かれている場合は、妊活中に妊婦さんや赤ちゃんを見続けるストレスから解消される点で、気持ちが楽に保てるかもしれません。

不妊症チェック! いったい何を調べるの?

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血液検査

専門クリニックの多くが行う血液検査。

血液の中には様々な情報が組み込まれています。
例えば妊娠に関わるホルモンは、前述の通り血液にのって運ばれています。ホルモンを直接確認できる採血は、有効な手段の1つです。

女性ホルモンの他に、プロラクチン、甲状腺関連ホルモン、AMH(抗ミュラー管ホルモン)などもあり、血液検査で調べられます。

プロラクチンは母乳を出すなど、産後の体を作るためのホルモンですが、出産を経験したことがない人でも高い事があります。高い場合は生理不順になる、排卵されず無排卵になる、着床障害を招くなどの症状が現れ、妊娠を阻害する因子となってしまうようです。症状の程度によっては、薬を服用しながら不妊治療をすることになるようです。

甲状腺の疾患がある場合、月経不順を引き起こし排卵異常も伴うことがあるため、不妊症の原因になることがあります。また、妊娠したあとも流産を起こしやすいなど深刻な要因のようです。異常がないかを調べ、必要であれば不妊治療と並診する事も考えなければなりません。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、『卵巣年齢』を測る指標として最近注目を浴びています。
女性は有限な卵子をもって生まれてきますが、その数は人それぞれです。平均して45~50歳ほどで閉経するといわれていますが、もともと卵子の数が少なくて20~30代で閉経してしまう「早発閉経」という人もいるようです。
AMHは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣予備能を知る指標になると考えられています。実年齢と卵巣年齢は違います。この値で卵子の質がわかるわけではないですが、自身の卵巣年齢を知り、妊活期間の目安にするのも良いかもしれません。

フーナーテスト(Huhner Test)

性交後、12時間ほどの間に病院を受診します。
女性は、排卵日付近になると子宮頚管(子宮の入り口)にさらさらな粘液を溜めます。その粘液を採取して粘液の状態や、粘液中に泳ぐ精子を顕微鏡で調べるのです。

正常な場合、元気に精子が泳いでいますが、元気な精子がいない、奇形な精子が多い、精子が見当たらないなどの異常が見られたら「無精子症」や「抗精子抗体」などを疑い、必要な治療を探していくようです。

卵管造営検査、卵管通気・通水検査など

子宮まで到達できた精子はその後、左右の卵管という細い管を泳いで上っていきます。
この卵管に詰まりなないか否かを調べる検査です。

詰まっている方はもちろん、炎症を起こしている、もともと通常より狭い人の場合、痛みを伴うものになるかもしれません。本来は、生理痛のような鈍痛程度だと言われています。

もし両側卵管が閉塞と診断された場合は、体外受精への視野を広げる心の準備が必要かもしれません。

不妊症治療にかかる費用・期間は?

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不妊治療には不妊症検査の他に、タイミング指導や人工授精、体外受精などがあります。
タイミング指導は保険適用ですが、それ以上の多くは保険適用外の自由診療になるため、病院によって設定金額はさまざまです。

一般的には、専門のクリニックより総合病院の方が設定金額が安価で良心的です。その分、妊娠の実績は専門クリニックの方が勝ってしまうかもしれません。
また、立地条件から大都市圏の方が地方より若干高価だとも言われています。
人工授精で1~3万円程度、体外受精は(採卵~移植までを1回として)20~60万円程度とその差は幅広いため、費用・通院のしやすさ・実績・検査内容・治療の進め方などを考慮し比較した上で、自身のライフスタイルに合った施設を検討することをお勧めします。


高額な治療費ということもあり、不妊治療の助成金を設ける自治体が増えています。
人工授精を主にした一般不妊治療へ助成金を設定する自治体もあれば、国が定めた規定に準じて体外受精などの特定不妊治療に助成金を設ける自治体もあります。

お住いの自治体に問い合わせ、通院する病院が助成金の適用を受けうる指定された施設であるかも確認した上で、上手に利用するとよいでしょう。


治療期間に関しては、考え方は人それぞれです。
前述のとおり、AMHの値から自身の妊活期間を見積もる人もいます。毎月の生理がきて落胆するのがつらいから、ステップアップを急ぐ人もいます。
逆に、経済的理由や仕事との兼ね合いから、同じ治療を続ける人もいるのです。

しかし、同じ治療を長く続けることで良い結果が得られる人は、そう多くはないでしょう。
不安な時には治療する施設の医師やスタッフに相談し、納得した上で治療を選んでいくべきではないでしょうか。

早期チェック!早期治療・対策をしよう

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妊活中でなくても、「いつか結婚して子どもが欲しい」と考えている女性は多いはず。
しかし、その「いつか結婚」が「いつ」になるのか、誰にもわかりません。

施設によっては、独身の人でも受けられる妊娠能のチェックをしてくれるところがあります。
不妊治療よりは簡易的になるかと思いますが、漠然と「私は妊娠できるんだろうか」と考えるよりは、数値で表れる検査は明白です。そこで初めて婦人科疾患に気付く人もいるかもしれません。

また、冷え性などの方は日頃から運動を心掛け血流をよくするよう努めるなど、意識改革が必要です。
「いつか」と考えず、その日がいつ来ても良いように、対策しておくことが安心につながります。

まとめ

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「不妊症」を考えるとき、「まさか私が」と思う人がほとんどです。
健康な私が、そんなことになるわけがない。誰もがまず、そう考えます。

しかし現在の日本において、不妊治療の体外受精で命を授かった赤ちゃんは、23人に1人ともいわれています。公立の小学校が少人数制での教育になった昨今でも、クラスに1人は体外受精で授かった子どもということです。
不妊治療は体外受精の他に、人工授精やタイミング指導もあります。それらの方が体外受精より、安価で通院しやすいことから考えると治療者数が多いと思われます。人工授精やタイミング指導での出生児数は統計がとられていないので不明ですが、全てを含めれば、不妊治療に関わった赤ちゃんは数え切れないほどの数になるのです。

つまり、不妊治療を行った夫婦は想像するよりずっと多く、「自分は当てはまらない」とは言い切れません。

妊娠を考えた時、日頃からのセルフケアを見直し、早めの受診をお勧めします。
そして自身の妊娠能を知った上で、必要であれば治療を受け、元気な赤ちゃんに出会いましょう。