多嚢胞性卵巣症候群の治療法とは?診断を受けた経験者が語る「体や心との向き合い方」

あなたは「多嚢胞性卵巣症候群」という言葉を知っていますか?字面だけを見ると非常に複雑な病名に見えますが、実は1つの体質のことを指します。お腹が痛くなったり、体調不良になったりといった明確な自覚症状がないため、婦人科に検査に行くまで気づけなかったという方も多くいます。今回の記事ではその症状や原因、改善方法、経験者だからこそ分かる心身との向き合い方についてご紹介しましょう。

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2017/04/25 公開 | 2675 view

多嚢胞性卵巣症候群の治療法とは?診断を受けた経験者が語る「体や心との向き合い方」

多嚢胞性卵巣症候群には治療法がない!?

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多嚢胞性卵巣症候群とは??

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)とは、排卵障害の原因となる一種の病的な体質のことです。別名PCO、PCOS(polycystic ovary syndrome)と呼ばれます。

まずは正常な女性の体の状態と比較しながら、多嚢胞性卵巣症候群の方の場合、どこかどのように違うのか説明していきましょう。
女性の体は通常28日〜35日間で次の月経が来るようになっていて、月経が始まってから次の月経が始まる前までを1周期と数えます。その周期をさらに細かく見てみると、月経期、卵胞期、黄体前期、黄体後期といった期間に分けられ、ホルモンの分泌量が変わることで、基礎体温の上下やお腹の痛み、胸の張りなどの体の変化が表れます。月経期〜卵胞期までの間に卵巣内(上の図の左右の丸い部分)で卵子を育てる役割を持つ“卵胞”が1周期につき1つずつ育ちます。(この時、どの卵胞を育てるかという選定は脳下垂体からの指令によって行われます。)その後、その卵胞が20mm前後の大きさになると、破裂して排卵が起こる仕組みです。
多嚢胞性卵巣症候群の場合、この脳下垂体からの指令に支障が起き、様々な卵胞に信号を送ってしまいます。本来1周期に1つしか育たないはずの卵胞が、指令の分散によりいくつも育ってしまうこと、それに伴って1つの卵胞が排卵する大きさまで育つのに時間がかかってしまうことなどから、排卵が遅れたり無排卵だったりという不調が表れます。排卵が遅れると次の月経も遅れるので、多嚢胞性卵巣症候群の方は生理が不順になります。
これが多嚢胞性卵巣症候群の方の体の状態です。

治療法がないってどういうこと?

実は現時点で多嚢胞性卵巣症候群の根本的な治療方法や完治のための薬はありません。この多嚢胞性卵巣症候群は病気ではなく体質なので、日々の生活の中で多少改善することはあっても、完治することはほぼないと言える病態です。「治療法がない」と聞いて驚かれた方も多いと思いますが、ホルモンの薬や注射などの処置を行い、排卵を誘発させることで妊娠しやすい体づくりをすることは可能です。多嚢胞性卵巣症候群の方が自分の病態に気づかないまま第一子を妊娠し、二人目妊活の際に初めて気づいたという方もいるほどですから、自然妊娠も望めます。多嚢胞性卵巣症候群と診断され、不安な気持ちをお持ちの方も多いと思いますが、自分の体のことを知って対策が打てる様になったことは、むしろ妊娠に向けた第一歩が踏み出せたと捉えてください。何も知らない状態で自然妊娠をただただ待ち続けるよりも、適切な処置をすれば確実に妊娠に近づきます。まずは落ち着いて、これから先どういった治療をしていくか考えていきましょう。

多嚢胞性卵巣症候群と診断されたら心に留めておいて欲しいこと

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ポジティブに考えること

この記事を書いている私は1年前、多嚢胞性卵巣症候群と診断を受けました。結婚から1年は2人の時間が欲しいという夫の意見を尊重して、結婚1年目を過ぎた頃から妊活を始めました。初潮の頃からずっと生理不順があった私は、生理周期を整える為にピルを飲んでいたことがあり、そのおかげで大体32日ほどの周期で生理が来る様になりました。しかし、ピルをやめてからはまた少しずつ周期がずれ始め、長い時には45日を過ぎても生理が来ない状態になりました。妊活を始めてからはアプリなどでは排卵のタイミングがいつか分からないこと、生理が遅れる度に「妊娠したかもしれない!」と期待、落胆して気持ちが揺れ動くことにストレスを感じ、まずは自分の体を知ろうと思い、産婦人科を受診しました。そこで初めて多嚢胞性卵巣症候群だと診断を受け、私の体と心との闘いが始まることになります。初めのうちは夫への申し訳ないという気持ちや自責の念が募り、悲観的な考えばかりが浮かんできました。ピルを貰っていた時にはそんな診断は受けていなかったため、まさか自分の体にこういったことが起こっていたとは知らず、もっと早く気づけなかっただろうかという後悔と、今後に対する不安な気持ちが膨らんでいきました。世の夫婦の10人に1人が不妊症と言われる時代。診断を受けたことは「不妊」が人ごとではないことを痛感した出来事でした。(不妊症には様々な原因が存在するため、多嚢胞性卵巣症候群に限ったことではありませんが、不妊症だと診断を受けた方の気持ちは何が原因だとしても心に大きな負担を感じることだと思います。)
治療に向かうのには気持ちの切り替えが必要でした。同じ女性でも、自然妊娠が基本だと考える人は多く、無意識に配慮の欠けた発言をする人も多くいました。きっと私も診断を受けていなかったら、すぐに妊娠していたら、治療をする人の気持ちは分からなかったのかもしれません。診断を受けた今だからこそ、子どもが出来ることの尊さをより深く感じることが出来るだろう、この苦労が愛情に変わるだろうと信じて頑張ることを決めました。多嚢胞性卵巣症候群の治療にはストレスが大敵。ポジティブに捉えながら前向きになることが重要です。

ネットでの検索を控えること

診断を受けてからは、ネットで自分でできる対策や改善方法はないかと探し回る検索魔になりました。きっとこの記事を読んでくださっている方の中にも、自分や妻がそういった診断を受け、この先どんな不妊治療や生活改善をしていけば良いのか、悩んでいる方は多くいらっしゃると思います。しかし、そんなみなさんに経験者だからこそ言えることは、ネットであれこれ検索をするのはやめて、自分の体と向き合う時間を作った方が良いということです。成功体験を語った掲示板やブログにはこんなサプリや食べ物を摂ったら妊娠した!といった情報が溢れています。でもよく考えてみてください。それで妊娠するのであれば、お医者さんが勧めないはずがありませんよね。ネットで流れている情報の中にはかえってあなたを妊娠から遠ざけるものもあるかもしれません。(豆乳が良いという話はよく聞きますが、ホルモンに似た働きがあるため、飲むタイミングや量によっては逆効果?←この様な不確かな情報がネット上には溢れかえっているんです)情報の取捨選択は本当に大事なこと。気になることがあればきちんと病院に行って自分の目と耳で正確な情報を知ることが妊娠への近道でしょう。

夫になかなか気持ちが伝わらなくてもヒステリーにならないこと

妊娠に対する考え方や気持ちが、なかなか夫に理解されずモヤモヤすることもあるでしょう。お腹の中で赤ちゃんを育て、体や環境(仕事など)の変化を伴う女性と違って、男性には変化がありません。本能や体の作りから違っていることを理解して、なかなか分かってくれない夫を責めたり、ヒステリーにならない様に注意しましょう。そのヒステリーが夫婦間のコミュニケーションを阻害してしまえば、結果的に妊娠は望めません。焦る気持ちも分かりますが、まずは落ち着いて今後の方針を話し合っていくことが何よりも大切です。

多嚢胞性卵巣症候群かどうかはどんな検査で分かるの?

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